《怪談》(かいだん)
ばけものに関する話。
妖怪・幽霊・鬼・狐・狸などについての迷信的な口碑・伝説の類。
【怪談物】(かいだんもの)
怪談を主題とする小説・浄瑠璃・講談・落語などの総称。浅井了意の著した『伽婢子』がその源流とされている。落語などの怪談話で有名なものに、「四谷怪談」「番町皿屋敷」「牡丹灯籠」などが有る。
[皿屋敷関連]
菊むしの事
摂州岸和田の侍屋舗の井戸より、寛政七年の頃夥しく異虫出て飛廻りしを捕へ見れば、玉むし・こがね虫のやうなる形にて、巨細に虫眼鏡にて是をみれば、女の形にて手を後ろ手にして有りし由。素外といへる俳諧の宗匠行脚の時、ひとつ二つ懐にして江府に来り知音者に見せけるを、予が許へ来る者も顕然と見たるよし語りぬ。津富といへる宗匠もひとつもらひて仕廻置、翌寅の春人に見せるとて取出しけるに、蝶と化して飛行しと也。右は元禄の頃青山家尼が崎在城の時、右家士に喜多玄蕃と言ひて家禄少からず給はりし者の妻、甚妬毒深く、菊といへる女を玄蕃心をかけて召仕ひしを憤りて、食椀の中に密に針を入て右菊に配膳させしを、玄蕃食しかゝりて大に怒りければ、「菊が仕業なる」よし、彼妻讒言せし故、玄蕃なさけなくも菊を縛りて古井戸へ逆さまに打込殺しけるより、下女の母も聞て倶に古井戸の内へ入て死せし由。其後右玄蕃が家は絶/\に成りしとや。今は領主もかはりて年へけるが、去年は百ヶ年忌に当りしが、菊が怨念の残りて異虫と変じけるや。播州皿屋舗といへる浄瑠理など有しが、右の事に本づき作りけるやと、彼物語りせし人のいひぬ。(『耳袋』巻之五)
於菊虫再談の事
前に記すお菊むしが事、尼ケ崎の当主は松平遠江守にて、御奏者番勤仕ある土井大炊頭実方兄にて、土井家へ為見られし右むしを営中へ持参にて予もみしが、前に聞し形とは少く違ひて、後より見れば女の形に似たり。後ろ手に縛りてはなく、蟋蟀の髭のやうなる者にて小枝のやう成るものに繋あり。図大概を左に記す。委細の書記も土井家より借てみしが、別に記ぬ。(『耳袋』巻之五)
この皿屋敷話は、『江戸砂子』に牛込御門内の皿屋敷の話が有って落語等で馴染みの「番町皿屋敷」話として伝わるが、寛保元年(1741)に為永太郎・浅田一鳥作の浄瑠璃「播州皿屋敷」が大坂豊竹座で上演され、この皿屋敷話には「番町」系と「播州」系の二つの話が伝わることとなった。上記の下女菊が盗賊向坂甚内の娘とする話も伝わり、関連の記事が『参考文献余滴』「向坂甚内」の項に紹介してあるので参照ください。
【伝説】(でんせつ)
神話・口碑などの「かたりごと」を中核にもつところの古くから伝え来った口承文学。(『広辞苑』第二版)
語り伝えられた物語などの類で、元となる話は事実であったり、伝来であったりするが、それらが誇張・歪曲され、その時々の文化・道徳や価値観によって取捨選択されながら伝えられた話。